親のせいで周りから孤立する子「2つのパターン」 繊細な人ほど悩みが深い“自分の心の守り方"

生まれつきとても敏感でストレスを感じやすい人がいる。そういったHSP(Highly Sensitive Person:アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念)の気質を持つ人たちの中には、コロナ禍でこれまで以上の「生きづらさ」を感じた人もいるようだ。
HSP専門カウンセラーで自身もHSPの気質を持つ武田友紀氏の著書『「繊細さん」の本』は、コロナ禍を背景に60万部を超えるベストセラーとなった。「大人になってからの人間関係の悩みや生きづらさは、たどっていくと親との関係に行き着くことが多い」と話す武田氏に、“繊細さん”目線で『親といるとなぜか苦しい「親という呪い」から自由になる方法』(リンジー・C・ギブソン著)を読み解いてもらった。

子と親で感受性の鋭さが違う

「繊細さん」の視点で親子関係を見ると、ごく一般的な家庭でも子が生きづらさを感じることがあります。親は虐待しておらず、子どもの話を聞いてくれるけれど、なぜか子どもの側は傷ついている、ということがあるのです。これを読み解くには、子と親で感受性の鋭さがちがうという視点が役に立つかもしれません。

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繊細さんは感受性が豊かで、光や音、相手の感情など、他の人が気づかない小さなことにもよく気づきます。たとえば繊細さんである子どもが「この服はタグがチクチクするからいやだ」と言ったときに、親は「そのくらい平気でしょ。気にしすぎだよ」と言う。五感においても人間関係においても、子どもの自然な感覚が親に理解されない状態が続くと、子どもは自分の感覚を信じられなくなります。

「イヤだと思う自分がおかしいんだ」「これを好きって言ってもいいのかな」と疑うようになるのです。その物事が自分にとって良いか・悪いかを判断するよりどころがなくなり、「まわりの人はどう考えるか」が判断基準になる。自分の感覚を信じられなくなることが、生きづらさにつながることがあるのです。

なお、生きづらさの要因はさまざまで、必ずしも親子関係だけが要因ではありません。仮死状態で生まれてきた、プールやお風呂で溺れそうになった、交通事故にあったなど、生命の危機を感じる出来事によってトラウマを抱え、それが生きづらさにつながる場合もあります。

こうしたトラウマがあると、体が緊張・警戒モードに入ってしまい、小さなことにもひどく驚いたり、落ち着いて人とコミュニケーションできなくなったり、感情の制御が難しくなったりすることがあるのです。

生きづらさの原因は必ずしも親子関係だけではないということを前提に、書籍『親といるとなぜか苦しい』に書かれている、精神的に未熟な親との関係に苦しむ感受性豊かな子について考えていきたいと思います。

子どものタイプ、2つに分けると

『親といるとなぜか苦しい』では、精神的に未熟な親を持つと、子は「内在化タイプ」と「外在化タイプ」に分かれると書かれています。

【内在化タイプ】
心の活動が活発で、学ぶことが好き。
内省し、自分の間違いから学ぼうとすることで、問題を徹底的に解決しようとする。
感受性が豊かで、原因と結果の理解に努める。
人生はみずからを成長させる機会としてとらえ、楽しみながら自分の能力を高めていく。
がんばれば、ものごとをよりよくできると信じ、自分の問題は本能的に自分で責任を持って解決しようとする。
ほかの人を不快にさせたときには罪悪感を抱き、主として不安を覚える。

【外在化タイプ】

考える前に行動する。

とにかく早く不安を払拭したくて、すばやく反応し、衝動的にものごとを進める。
内省することはほとんどなく、何かあれば自分の行動よりもほかの人や環境のせいにする。
自分の間違いを将来に活かすことはめったにしない。
自分が幸せになるためには周囲が変わらなければならないという考えに固執し、自分の望むものをほかの人が与えてさえくれれば問題は解決すると信じている。
まわりの人は、彼らの衝動的な行動のせいでもたらされるダメージの修復をせざるをえない。

この2つのタイプを見ると、感受性豊かな「繊細さん」は内在化タイプだと思われるかもしれません。ですが実際には、繊細さんにも外在化タイプがいます。外在化タイプのわかりやすい特徴は、問題が起こったときに人や環境のせいにするということですが、繊細さんのなかにも「相手が悪い!」と人のせいにしやすい方がいます。

HSPは生まれ持った気質ですが、内在化タイプか外在化タイプかは、本人の性格と親への対応の掛け合わせ、つまり生存戦略として発展したものだろうと思います。

信頼がないと反発できない

親に対する子の生存戦略について、具体例を挙げてみましょう。たとえば、親に理不尽に叱られたとき、子どもが親に言い返すのは、実は難しいことです。子どもは1人では生きていけないため、親に言い返すといっても、見捨てられないようにしなければなりません。言い返しても親は自分を見捨てないだろう、殴ったりもしないし、親はきっと自分の感情を受け止めてくれる、という信頼がなければ反発はできないんです。

理不尽に叱られて怒りの感情が湧くけれど、「自分のせいだ」ということにして場を収め、怒りを感じないようにフタをする。こうした戦略をとる子は内在化タイプになりやすいでしょう。

一方で、親には抵抗できないけれど、自分が怒られたのは他の子や状況のせいだ、と他者に怒りを向けることで自分を守ってきた子は、外在化タイプになるのではないでしょうか。

私のところへ相談に来る方は、人間関係や仕事上のトラブルを「自分の責任だ」と思う内在化タイプが多いです。「自分が変わらなきゃ」と思うから、カウンセリングにいらっしゃるんですよね。

外在化タイプは「会社が悪い!」「上司が悪い!」と人のせいにするので、よほど行き詰まらないかぎりはカウンセリングに来ない印象があります。自分が変わる必要性を感じないからだと思います。

子どものころの生存戦略は、多くの場合、大人になってからも使われます。批判的な親のもとで育った場合、社会に出てからも同僚や上司に批判されないよう常に身構え、仕事を完璧にこなすことで指摘を受けないようにするなどです。

生存戦略が世間の価値観と一致している場合は、特にやっかいです。「親に頼ったりせず、自分の力でなんとかすることで、見捨てられないようにする」という戦略をとった場合、社会人になってもなかなか人に頼ることができません。

社会人として「がんばって自力でやる」ことは評価されますから、「そんなに抱え込まなくていいんだよ。もっと適当でいいんだよ」とはめったに言ってもらえません。どこかで自分を振り返る時間をとらなければ、しんどい状況が続くことになります。

他にも、社会人になってこれまでとは違う分野で働いてみたいと思っても「一度やり始めたことをやめてはいけない。移り気なのは認められない」といった怖さが湧いてきて、転職に罪悪感を覚える場合もあります。

カウンセリングでお話を伺うと、本来はいろんなことに興味が湧いて、あれもこれもとやりたい子どもだったけれど、親から「フラフラ遊んでいないで、ちゃんとしなさい!」「やり始めたことは続けなさい」と言われて、それ以上怒られないよう「親からみてちゃんとしている状態」を目指してきた、という背景がみえてくることがあります。

子どものころに同じ習い事を続けることで怒られることが減り、ときには親が認めてくれたため、親に対する生存戦略が成功体験となって、大人になっても外れにくくなっているのです。

生きづらさを軽くする処方せん

子ども時代の生存戦略を手放すには、「自分は、本当はどうしたいのか」をゆっくり考えてみるといいですね。心と体はつながっていますから、「どんなときに体調がよく、のびのびできているか」と体調面から振り返るのもおすすめです。

自由を感じるとき、のびのびと動けるとき、情熱が湧き出るときなど「自分にとってのいい状態」はどんなときなのかを振り返り、「私はこれがいいんだよね」と受け止めることが、親の声や、子どものころの生存戦略から抜け出す助けになります。

(構成:中原美絵子)

2023-08-03T01:01:33Z dg43tfdfdgfd